神灵附体

genius - texte - poets

引きこもり、気が塞いでいた天才「ダンテ」が、絶望から抜けだすためにしてきたこと

絶望や挫折、この世界には深い深い闇があります。ある希望を抱いていたものが突如として、壁として立ちふさがり、チリになっていく。こういった時に人間は世界にたいして挫折し、絶望するのです。それからの生活はひどいもので、毎日がありふれていて退屈な世界と感じ、悶々とただ怠惰に時を過ごします。「神曲」を描いたダンテ・アリギエーリも同じように、暗い森の中から物語が始まります。

 

 

暗い森はダンテにとって、怠惰で明るみのない生活の様子を表しています。なぜダンテほどの人間がこのような生活をしているのでしょうか。それは彼もこの世界に絶望した人間の一人だからです。ダンテはイタリアに在住していた時に、「白党」という政治的地位に所属していました。しかし、対する「黒党」との政争に敗れ、イタリアのフィレンツェから追放されてしまいます。

 

 

このようにダンテも希望を抱いていた「白党」という地位から転落し、突如として絶望の世界へと引きずり込まれてしまったのです。それからのダンテは、ぼくらと同じように毎日を退屈で意味のない時間を過ごしていました。そう普段のぼくらの生活となんら変わりません。引きこもり、肉体的な快楽に身を浸からせていました。

 

 

しかしそんな生活もいつかは終わりを告げます。ダンテは過去と未来を見据えた時に、このままでは死ねないと思い、無我夢中で道無き道を進んでいきます。彼の身に起きた変化とは、死の体験です。人が生まれた時には、必ず太陽の下に生まれます。生まれた時から、独房にでも入れられない限り、光を知らない人間はいないのです。そんな一切の光もない暗い森での生活に身も心も尽き果てたダンテは、太陽の光を求めて現実というコントロールされた空間から身を投げ出します。すると暗い森を抜け、丘の麓へとたどり着きました。

 


ダンテが着いたのは谷のずっと下にある丘の麓です。ここは絶望のどん底であると思われます。絶望を抜けるには一度、どん底まで行く必要がありました。なぜなら一番したまで降りてしまえば、後の道はのぼる他にないからです。つまり絶望の空間を抜けるためには、そこに居続けるだけでは抜けだすことはできません。それでは何の進歩もなく同じ所をぐるぐると回っているにすぎないからです。むしろ怖れを感じるもっと下へと降りていく必要があったのです。