Nowhere Man's Side

何者でもない人達へ

自分は誰よりも才能がないと自覚していた天才「ダンテ」が、どうやって責任ある仕事を果たすための自信を取り戻したのか

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ぼくたちは時々、責任ある仕事を受け持つことがあります。しかし、責任にはある程度の「期待」という重みがのしかかってきます。大抵の人はその期待には応えられないと思い込み、その見えない何かに恐怖を感じて、その場から逃げ出してしまうことがよくあるのではないでしょうか。

 

 

ダンテ・アリギエーリも、自分がシルウィウスの父のように地獄へと赴き、世界を変えるだけの価値ある存在なのか疑問を感じていました。自分がそれだけの能力を本当に持っているのか、信じられなかったのです。それもそのはずです、彼は今まで暗い森の中を彷徨っていたのですから。

 

 

この話を聞いた導き手ウェルギリウスは、ダンテを激励しました。「どうもおまえの心は恐怖に怯えているようだ。人間はどうやら時々臆病風に吹かれるらしい、それで名誉ある仕事を投げ出したりする。夕闇に敵影を見て怯える獣のようなものだ。おまえが心配しなくてすむように、なぜ私がここへ来たか、何を聞いて、お前に同情するようになったか、話しておこう」

 

 

この先の話で導き手ウェルギリウスは、天使ベアトリーチェの言葉によって遣わされたのだと明言します。ベアトリーチェとはダンテの初恋の相手であり、彼にとっては天使そのものでした。ですがベアトリーチェはわずか16歳という若さで亡くなってしまい、文字通り彼女は天使となってしまいます。

 

 

それでは何故ここでベアトリーチェが登場してきたのでしょうか。詩人ダンテはこれから地獄巡りに行こうとしています。それにはそれ相応の覚悟が必要です。その時に恐怖の感情から突き動かすのは何か。それが天使という存在なのです。

 

 

天才たちは世界に対して必ず絶望するような体験をしているのですが、それを克服する時に天使の存在が必ずあります。誰だって好きな人、愛する人から何か頼まれごとをされたら何もしないわけがありません。すぐに行動に移るはずです。その先が地獄であろうと、煉獄であろうと、彼女に会えるとわかっているのなら、ぐずぐず立ち止まってはいられないのです。

 


こうした経緯を聞いて自信を失くしていたダンテは、このままではいけないと昂然とし、一刻もはやく彼女に会おうとウェルギリウスに、地獄へ案内してくれるようにと懇願します。天才たちのように地獄へ行き、世界に絶望し才能を開花させるには、多くの苦痛が伴います。だからこそ、その苦痛さへも厭わないという気持ちを得るために天使の存在が必要不可欠なのです。