Nowhere Man's Side

何者でもない人達へ

絶望的な敗北を感じないと、成功することはできない。100というプラスを得るにはマイナスを知らないといけない。

下へ行くということは暗い道を進むということ

「人生は、上へ上 へ行くことが成功なのだ」とみんなは思っているようだけど、ぼくは逆に、「人生は下へ下へ行くことが成功なのだ」と思っている。人生は上へ行こうと思えば 思うほど、期待や責任に押しつぶされ、かえって人間らしさを失ってしまう。遠く先に見える未来を追っているだけでは足元をすくわれて、いづれは上へ歩むこ とを諦めてしまう。

 

人生を楽しみ、ほんとうの意味で成功を得るためには、上を見上 げることを止めて、下に道があることを思い出す必要がある。そのためには一度、自分が持っているものを全て投げ出す覚悟が必要だ。人間というのは、多くを 持っていた方が強く見えるけれど、実はたった一つのことだけを信じ、少ないものを身につけている方がずっと人間としては強いのだ。

 

ぼくはこの意味をよく、ある喩え話にして話している。ぼくたちは山を登っている。しかし道の果ては一切見えず、ただ地平線を進んでいるように見える。なぜ山 を登っているのに平らな道を進んでいるように見えたのだと思う?それは彼らには山を登るという、何の「理由」も「目的」もないからだ。つまり彼らは人生と いう山を登っているように見えて、実は頂きを目指すという理由が全くなく、その目的がないために、ただ平らな道を歩いているのだ。それは人生を無駄にして いるとも言える。

 

それでは一体、どうしたらあの山の頂きを目指す「理 由」と「目的」が見つかるのだろうか?そのためには一度、山を登ることを諦め、地下深くへと進む必要がある。ここに一つの階段がある。ここを降りるために は、道はとても狭く、今までに手に入れたものを全て手放さなければならない。理由と目的を手に入れるためには、その重荷を全て置いていく必要があるから だ。

 

あなたは全ての荷物を置き、一度呼吸を整えると、それを機に深く暗 い階段の下へと降りていった。階段の先はもっとも深い場所で、一切の光が届かなかった。彼は恐怖と不安におののき、全身が全く動かなくなっていた。この先 は本当に何かあるのだろうか?疑念と焦りとが彼を拘束したが、一度決意をしたことを思い出して、勇気を振りしぼり、一寸先も見えない暗い道を歩きだした。

道の奥底は暗く不安であるが、そこにあるのは自分の存在だけ

暗 い道を歩いていると感覚がだんだんと麻痺してくる。どこが上で下なのか。前へ進んでいるのか。それとも同じ所をぐるぐると回っているのか。そんな疑問も麻 痺してきて、あなたはついに自分が生きているのか、それとも死んでいるのか。ここは夢の世界なんじゃないかと考えるようになっていった。

 

一 匹の虫がいた。夜、虫は明かりを求めて、電灯に集まってくるが、彼も同じような境地にいた。意識のなくなった体は本能的に明かりのあるところを求めて、た だ一つの方向に進んでいた。それは目には決して見えない光だったが、全ての感覚が麻痺した今、あなたは直感を便りにその光を見つけ出したというわけだ。

 

光 の下へついたあなたは、不思議な感覚を感じとった。それはなんというか。闇に包まれていたはずなのに、今は全てが光に包み込まれ、全能感を感じとり、自分 が神さまであるかのように感じたのだ。その時、あなたはこの世界に生きる理由はないことを認識した。自分が神さまであるのならきっと、この世界をつくり出 したのは、ただの気まぐれで、深い理由はないはずだ。適当にしていたら、いつの間にかできたんだ。

自分を愛することができるか

あ る意味で悟りを開いたあなたは、この世界は適当で不平等なものなのだということを知った。ここに来てやっと人は、小さな頃のように無邪気で素直な気持ちが 蘇ってくる。生きることはその場その場を楽しむことであり、悲しむことであり、感情の流れにまかせて生きていくことが自然なのだと理解する。

 

し かしそうした時、ぼくたちの住む現実世界はいきなり牙を見せてくる。なりふり構わず自分だけが、自由に生きることは世界を破滅へと導くのだとそう脅してき たのだ。あなたは怯えながらも、そんなんじゃ生きている意味がないよと反論する。ただ世界はぼくたちよりもずっと大きく、ちょっとやそっとのことでは、全 く動じない。それよりもだんだんと批判は大きくなり、やがてはあなたを、異端者だと言って閉じ込めてしまった。

 

あ なたはわけがわからなかった。どうして自分が閉じ込められているのか。そして何か間違ったことを言っているのか。だいたいこの世界に間違いなんてあるわけ ない。世界は正しさを求めてつくられたわけないじゃないか。あなたは怒っていた。世界に対して不満を抱いていたからだ。そして「そんな世界は変えてやる」 とあなたは思い立って、世界を変えるために行動を始めていった。

絶望の果てに見えたものと進むべき道

あなたにはもう「理由」と「目的」が存在していた。世界を変えたい「理由」とどんな世界をつくり出したいのかという「目的」があった。とうとうあなたは一度、水平を歩いていたにも関わらず、階段をおりてから、絶望し自分を発見して、理由と目的を見つけることができたのだ。

ここまでの話をまとめると、大きな流れが見えてくる。

  1. だれもが退屈な世界を、ただ何となく過ごしている
  2. 山の頂きを目指し成功するために、下へと降りていく。
  3. 下の奥底では深く暗い世界が待っている。
  4. そこで感覚が麻痺したが、直感を頼りに光を探しあてた。
  5. 神さまになったが、現実世界は自分を排除しようとしてくる。
  6. 拘束されたあなたは怒り、不満を感じて、世界を変える理由と目的を手に入れた。

数字で見ると、もっとわかりやすい。

  1. 0から-10
  2. -10から0。
  3. 0からー100。
  4. ー100から100。

 

こ れが人生を成功へと導く方程式だ。人は0から着実に100へと向かうことは決してできない。100というプラスを知るにはマイナスをしらなければならない のだ。多くの人はプラスとマイナスの概念を感じ取ることなく生きている。これでは成功できるわけがない。どんなものにも、上があれば下があるものなのだから。